矯正治療後に後戻りしないか
後戻りとは、歯列矯正治療後に、矯正した歯が元の位置に戻ろうとする現象です。
矯正治療で歯並びを整えた後も、歯は一定の期間で安定することが必要です。
リテーナー（保定装置）を適切に使用しない、舌癖や口呼吸などの生活習慣が影響すると、歯並びが戻ってしまうことがあります。
これが進行すると、再治療が必要になることもあります。
歯列矯正後に歯が戻る理由は、矯正後も歯や骨は完全に安定するまで時間がかかるためです。
リテーナーを使わないと、歯は「元の位置に戻ろう」とする自然な力が働きます。
歯列矯正は、歯を動かすことと歯を固定する2つの治療を経て歯並びが整っていきます。
保定装置（リテーナー）を決められた時間通りに装着しない、使うのを途中でやめてしまう、または破損したまま使用を続けると、歯が元の位置に戻ろうとする力が強くなり、歯並びが再び乱れてしまいます。
通常、矯正治療後は最低でも1～2年間はリテーナーを使い続ける必要があります。
矯正後1年目は基本的に1日中リテーナーを装着します。2年目以降は就寝時のみの装着でも大丈夫です。段階的に装着時間を減らしていくことはできますが、年齢や治療内容によっては、数年間使い続けることが必要な場合もあります。
治療後も定期的にチェックを受け、適切な使用方法を守ることが、歯並びの後戻りを防ぐための鍵となります。
舌癖（ぜつへき）は、歯列矯正後の後戻りの大きな原因の一つです。
舌癖とは、日常生活の中で無意識に舌が歯に押し付けられたり、歯の間から舌が出たりする習慣を指します。
このような習慣が続くと、歯が舌の圧力で不自然な方向に動いてしまいます。
歯は、唇や頬の外的な力と舌の内的な力が均衡を保って並びますが、舌が歯に押し付けられたり、舌先が歯列からはみ出したりすると、矯正後に歯並びが元に戻る原因になります。
特に、舌で前歯を押すと、矯正後に前歯の間に隙間ができたり、前歯が前に出てしまうことがあります。
親知らずは矯正治療後に影響を与えることがあります。
矯正治療の前に抜歯するのが理想的ですが、子供の頃に矯正を受けた人や部分矯正を行った人など、親知らずが残っている場合もあります。
親知らずが他の歯を圧迫すると、歯並びが乱れて後戻りを引き起こすことがあります。
矯正後の美しい歯並びを維持するためには、親知らずを抜歯することを検討するのも一つの方法です。
特に、親知らずが歯列に影響を与えている場合は、早めに対応することが大切です。
成長期には、顎の骨が発達するため、歯並びや咬み合わせ、さらには顔の形も変化することがあります。
特に20歳前後までは、顎や顔の骨が成長を続けるため、矯正治療後に顎の成長が歯の位置に影響を与え、後戻りが起こることがあります。
歯列矯正の後戻りは、再治療によって再び歯並びを整えることができます。
再治療の期間や費用は後戻りの程度に応じて異なりますので個人差があります。
軽度の場合は、短期間で費用も抑えられることが多いですが、重度の場合は初回と同じくらいの期間と費用がかかる可能性もあります。
まずは現在どの程度後戻りをしてしまっているかを診断して、どんな治療法があるかを確認しましょう。主な治療法は以下の通りです。
ＷＩＲＥＯＲＴＨＯ
後戻りが進行してしまった場合、ワイヤー矯正は歯並びをしっかり整えたい方に適した治療法です。
特に、歯の位置が大きく戻ってしまったり、前歯が大きくずれた場合、ワイヤー矯正を選ぶと効果的です。
軽度の後戻りの場合は、リテーナーを使って改善することもできますが、後戻りが深刻で再度歯を大きく動かす必要がある場合は、ワイヤー矯正が適しています。
ＭＯＵＴＨＰＩＥＣＥ
後戻りが進行している場合、マウスピース矯正（インビザライン）は目立たず快適に治療を進めたい方に適した選択肢です。
特に、歯並びが軽度または中度の後戻りであれば、インビザラインで歯を動かすことができます。
ワイヤー矯正と比べて装置が目立たず、取り外しが可能なので、食事や歯磨きがしやすい点が大きな利点です。
ただし、歯の動きが大きくなると、効果が限定的になることもあるため、治療計画をしっかりと立てることが大切です。
ＣＥＲＡＭＩＣ
後戻りがひどく、歯の形状が気になる場合には、セラミッククラウンやラミネートべニアを使用して見た目を改善することができます。
これにより、歯並びだけでなく審美的な問題も解決できます。
ＭＴＭ
部分矯正は、歯並びの一部分だけが後戻りした場合に適した治療法です。
例えば、前歯や特定の歯が少し戻ってしまった場合、全体の矯正治療を行わなくても、部分矯正で必要な部分だけを調整することができます。
治療期間が短く、費用も抑えられるため、軽度の後戻りには効果的です。
ただし、歯並びのバランスや噛み合わせが大きく影響を受ける場合は、部分矯正だけでは不十分なことがあるため、まずはご相談ください。
後戻りは矯正治療後、リテーナーを適切に使用しない場合に数ヶ月から数年後に起こることがあります。特に矯正後の初期段階でのリテーナー使用が不十分だと、後戻りが早く進行することがあります。
定期的にリテーナーを使用し、舌癖や口呼吸などの悪習慣を改善することが予防につながります。また、矯正治療後も定期的な歯科医師のチェックを受けることが重要です。
後戻りが軽度であれば、リテーナーの再使用や部分的な矯正で改善できることがあります。重度の場合は、ワイヤー矯正やマウスピース矯正が必要になることがあります。
後戻りの程度によりますが、軽度の場合は比較的低コストで治療できます。重度の場合は、初回の矯正治療と同様の期間や費用がかかることがあります。
結論として、自力で後戻りを治すことは難しいです。歯は骨の中にある歯根にしっかりと固定されており、歯を動かすには専用の装置や力を加えて動かす必要があります。