「この年齢からでも矯正って間に合うかな。」そんな気持ちにそっと寄り添います。
ここ数年、健康や予防への意識が高まり、見た目だけでなく“噛む力”や将来の歯のために大人から始める方が増えています。
大人になって自分自身に投資できる余裕ができてから、歯列矯正を始める人も多いです。
歯列矯正に明確な年齢制限はなく、目安になるのは歯茎や骨の状態。
年齢を重ねていても、条件が整えば十分に治療は可能です。
この記事では、始められる条件や年代別の注意点について詳しくご案内します。
歯列矯正は何歳が受けている?
まずは実際に歯列矯正を行った患者の年齢割合について、厚生労働省が発表しているデータを見てみましょう。
年齢別の矯正歯科治療経験者の割合
(令和4年 歯科疾患実態調査より作成)
歯列矯正に
年齢制限はありません
矯正に明確な上限年齢はありません。大切なのは“年齢そのもの”ではなく、いまのお口の状態。歯茎(歯周組織)と骨の健康が保たれていれば、40代でも50代でも、計画を整えれば十分に進められます。見た目を整えるだけでなく、磨きやすさや噛みやすさが上がることで、将来のトラブル予防にもつながります。
可否を決める3条件
(歯周組織・骨・治療遵守)
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歯周組織の健康
血や腫れが強い場合は、まず歯周の治療とクリーニングを優先。炎症を落ち着かせてから矯正に入ると、歯の動きも安定します。
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骨(支持組織)の量と質
レントゲンやCTで土台を確認。骨量が少ない部位は動かし方を控えめにする、動かす順番を工夫するなど“無理をしない設計”で対応できます。
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治療の続けやすさ
装置の使い方や通院のペースを守れることが成功のカギ。仕事や家事のリズムに合わせて、マウスピース・ワイヤーなど“続けやすい選択”を一緒に決めます。
年齢と治療期間の関係
(動きやすさ/計画の工夫)
若いほど歯はやや動きやすい傾向にありますが、大人でも計画次第で十分に整います。
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期間の目安
全体矯正でおおむね1.5〜3年。大人は“歯周管理を挟む・動かす距離を調整する”分、+数ヶ月見ておくと安心です。
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効率化の工夫
・先に歯周治療・被せ物の見直しを行い、動かしやすい土台を作る
・忙しい時期は調整間隔をやや広げ、在宅ケアを強化
・目立ちにくい装置や取り外し式を選んで“続けやすさ”を確保
「もう遅いかも」を合図に、今の状態を知るところから。検査でリスクと最短ルートを理解すれば、どの年齢でも無理なく歯列矯正を進められます。
子どもの歯列矯正は
何歳から可能?
はじめて相談するなら
歯列矯正を始める目安
小児矯正は、前歯と6歳臼歯が顔を出し始める低学年ごろ(目安:6〜7歳)が1つの目安です。 永久歯が生え揃う前なら、あごの成長力を利用して歯が並ぶ“土台づくり”(例えば、成長誘導や将来の乱れを防ぐためのコントロール)を取り入れやすくなります。
日本人は欧米と比べてあごが小さく、歯の並ぶ余裕が不足しやすい傾向があります。 大人の矯正が「並んだ歯を動かして整える」治療なのに対し、子どもの矯正は成長期にスペースを確保して、永久歯が自然に収まりやすい状態をつくることが主な目的。 だからこそ、生え替わりが大きく進む前にスタートできると、装置や期間の選択肢が広がり、負担の少ない計画が立てやすくなります。 最適な開始時期はお口の状態で変わるため、まずは早めのチェックがおすすめです。
タイミングを逃さないために
何歳までに歯列矯正を始めておくべき?
小児の矯正は、いわゆる「第一期」にあたる段階で、あごの成長をうまく後押しし、永久歯が収まる“余白”をつくることが主な目的です。
ここで土台を整えておくと、大人の歯がそろってからの本格矯正(=第二期)を最小限にできたり、場合によっては不要になることもあります。 ポイントは、乳歯と永久歯が混在している時期に始めること。生え替わりが進み切ってからでは、できることが限られてしまいます。 一般的に、9〜12歳ごろに乳犬歯や第一・第二乳臼歯が永久歯へと置き換わり、最終的な並びが形づくられていきます。 つまり、第一期として介入できる“上限の目安”は9〜12歳。
お子さんの歯並びや噛み合わせが気になり始めたら、この年齢帯に入る前までに一度、矯正の専門家へ相談しておくと、負担の少ない進め方を選びやすくなります。
大人の歯列矯正は何歳まで可能?
明確な年齢制限はない
年齢そのものがストッパーになることはありません。
ポイントは「動かす土台が整っているか」。歯茎に炎症がない、支える骨が十分である、通院や装置の取り扱いを無理なく続けられる
――この3つが満たせれば、40代・50代以降でも計画は立てられます。
既存の被せ物やブリッジ、インプラントがある場合も、順番や方法を工夫することで対応できるケースは少なくありません。
歯の状態によって変わる
とくに歯周病が進んでいて歯槽骨が痩せている状態では、歯を動かす力が骨のさらなる吸収(減少)を招き、動揺や抜歯リスクを高めるため、そのまま矯正を進めるのは危険です。
まずは歯周治療で炎症を鎮め、骨と歯茎の安定を取り戻すことが前提になります。
また、奥歯の欠損があると、歯をコントロールするための“支点(アンカー)”が不足し、治療設計が難しくなります。
とはいえ近年は、ミニスクリュー(TAD)やインプラントを一時的な支点として用いる方法、あるいは補綴(被せ物・ブリッジ等)を段階的に組み合わせる計画によって、欠損があっても矯正を成立させられるケースが増えています。
要するに、歯周組織が落ち着いていること、アンカー設計が可能であることが安全に進めるためのカギです。
精密検査(ポケット測定・動揺度・レントゲン/CT)で現在地を見極め、必要なら歯周治療や虫歯治療、補綴の見直しを先行してから矯正を計画する——この順番が、年齢に関わらず“無理のない矯正”への近道です。
歯列矯正にかかる期間の目安
大人の矯正に要する期間は、お口の状態と治療ゴールで大きく変わりますが、全体矯正なら装置を付けているのは概ね1年半〜3年がひとつの目安です。
年齢が上がるほど歯周管理や動かし方の配慮が必要になり、計画がやや長めになるケースもあります。
装置を外した後は、歯の位置を落ち着かせる保定(リテーナー)の時期に入り、目安は約1〜3年。
取り外し式でも、着用時間をきちんと守るほど安定が得やすいのが実感値です。
なお、装置の種類でも差が出ます。表側ワイヤーは比較的テンポ良く進みやすい一方、舌側(裏側)装置は目立ちにくい代わりに細かな調整が増え、期間が長めになりやすい傾向があります。いずれも、前処置(虫歯・歯周治療や被せ物の見直し)をしっかり行うほど、無理のないスケジュールを組みやすくなります。
年齢別に見る歯列矯正の注意点
小児矯正(6歳〜12歳)の場合
あごの成長を味方にできる大切な時期でタイミングを逃さないことが重要です。
前歯や奥歯が生え替わる間に、幅や噛み合わせをやさしく整えます。口呼吸や舌の癖、虫歯予防もいっしょに見直すと、その後の治療がぐっと楽になります。
成人矯正の場合(20〜40歳)
仕事や家事と両立できる進め方がポイント。
まず歯茎や虫歯を整えてから、目立ちにくさ・通院ペース・費用感を確認。被せ物がある方も、矯正と合わせて計画すれば無理なく進められます。ライフイベントも多くなる時期なので、それに合わせた計画も必要です。
40歳以上の矯正の場合
歯茎や骨の状態を丁寧に確認し、歯にかける力を弱めにしてゆっくり進めます。
動きが穏やかな分、保定は少し長めに。持病やお薬がある方は、主治医と連携しながら安全な範囲で計画します。
高齢者(60歳以上)の場合
まずは残っている歯を守ることを最優先に。
体調やお薬、骨の状態を確認し、負担の少ない方法で無理なく進めます。奥歯の欠損は補綴やインプラント併用も検討。清掃しやすさと食べやすさを大切に、定期メンテナンスで長く安定を目指します。